バキュームカーってどんな車?環境整備の強力な担い手、し尿収集を効率的にサポートします(^-^)
下水道の普及されていない地域のし尿汲み取りや浄化槽清掃などに活躍する衛生車「バキュームカー」。
バキュームカーとは、トラックの荷台の代わりに大きなタンクと真空ポンプ、吸引ホースを装備した自動車です。
液状の汚物を吸引ホースで吸い上げて、タンクの中に貯め込み、運搬します。
バキュームカーとは主に汲み取り式トイレの糞尿や、浄化槽に貯まった汚水の回収に使われます。
バキュームカーは、もともと汲み取り式トイレの糞尿の回収のために開発された車です。
水洗式トイレがまだ普及していなかった時代には、街中や住宅地で頻繁に見られたものでしたが、1980年代以降は見かけることは少なくなりました。
しかし、バキュームカーの活躍の場がなくなったわけではありません。
数は少なくなったものの、汲み取り式トイレは依然として残っています。
工事現場やイベント会場の仮設トイレは汲み取り式ですし、列車などに設置されている簡易式水洗トイレも汲み取り式トイレの一種です。
また、下水道が整備されていない地域に設置された浄化槽のメンテナンスには、定期的な汲み取り作業が必要になります。
浄化槽とは?
トイレや台所、お風呂、洗面所から流される生活排水を浄化して、川などに流すための装置です。
下水道の整備が遅れている地域では、汚れた生活排水を処理するために、浄化槽の設置が義務付けられていおります。
バキュームカーはほかにも、排水溝に詰まった汚泥を取り除く作業や、産業廃棄物の回収にも利用されています。
バキュームカーの構造と仕組み
バキュームカーは、バキューム(真空)の名の通り、真空による圧力差を利用して、タンク内にある液状の物体を吸い上げます。
基本的な構造は、液状の物体を貯めるタンク、真空ポンプ、吸引ホース、タンクと吸引ホースを接続するバルブ(弁)の4つから成り立ちます。
バルブは通常閉じているので、タンクは密閉された状態です。
タンク内に液状物体を吸い上げるには、まずタンクの上部や周辺に設置された真空ポンプを作動して、タンク内の空気を吸い出します。
タンク内は密閉されているため圧力が下がり、外気圧とタンク内の圧力に差が発生します。
この圧力の差が強力な吸引力を生み出すのです。
そして、タンク内の圧力が低下しているときに、バルブを開きます。
すると、吸引ホースから圧力が低いタンク内に、一気に吸い込むことができるのです。
昔のバキュームカーは、タンク内の空気を強制的に排出するだけだったため、タンク内に貯まった汚物の匂いが周囲に拡散してしまうという欠点がありました。
しかし、その欠点は改良され、消臭装置の装備により悪臭を放つことはありません。
バキュームカーの機能
真空ポンプ
真空ポンプはバキュームカーの心臓にあたる重要な装置です。
液体や固形物を通さない構造になっているため、汚物がポンプを通過して外に排出されることはありません。
気体を排出してしまうので悪臭を放つという問題がありましたが、消臭装置により悪臭問題は回避されております。
真空ポンプはタンク内の空気を吸い出すだけでなく、逆に外気をタンク内に吸い込むこともできます。
つまり、真空ポンプの動作を切り替えることで、タンク内部の圧力を高めて汚物を排出することにも使われるのです。
タンク
タンクは液状の物体を貯めるための容器です。
タンクの上部には主マンホールと呼ばれる蓋があり、タンク内の清掃やメンテナンスのために、人が出入りできる構造になっております。
この蓋は、満載時でも漏れないように、取り付け部分がタンクより高くなるように工夫されています。
吸引ホース
液状物体を吸い込むための装置です。
吸引時にホース内の圧力が低下するため、外圧でつぶれないように、金属コイルが埋め込まれた強い構造になっています。
吸引ホースを通るものであれば多少の固形物もタンクに吸引することができるほか、タンク内に貯めた積載物を排出するときにもホースを活用します。
脱臭機・燃焼式消臭器
脱臭機は真空ポンプから排出される悪臭を取り除く装置です。
燃焼式消臭器は、悪臭を放つ気体を燃焼することで完全に臭いを取り除きます。
燃焼方式にもガスや軽油など、さまざまな種類があります。
バキュームカーの最大の欠点が悪臭を放つことなので、各メ-カーで研究・開発が進められている装置です。
バキュームカー運転手の仕事内容
汲み取り式トイレの糞尿回収
汲み取り式トイレの糞尿を吸引ポンプで吸い上げて運搬する作業です。
下水道の未整備地域にある汲み取り式トイレ、イベント会場や工事現場に設置された仮設トイレなどが対象になります。
ただし、汲み取り式トイレの数自体が減っているので、作業をする機会は少なくなってきています。
浄化槽の保守点検と清掃
浄化槽が設置されている企業や家庭を巡回し、保守点検を行う作業です。
浄化槽はバクテリアなどの微生物の働きによって汚物を分解するため、浄化槽内の微生物が正しく働いているか、装置が正常に機能しているかなどを定期的に点検する必要があります。
ただし、浄化槽の保守点検には、国家資格である浄化槽管理士の取得が必要です。
また、浄化槽は年に1回以上、浄化槽内の汚泥などの吸い出し、装置の洗浄を行う必要もあり、浄化槽内部に入って清掃する場合もあります。
産業廃棄物の処理
バキュームカーの仕事はトイレや浄化槽に関わる仕事が多いですが、産業廃棄物を処理することもあります。
工場や建設現場などで排出された液体状の産業廃棄物(汚泥や廃油)を回収して、それぞれの処理施設まで運搬します。
畜産農業から排出される動物の糞尿も産業廃棄物のひとつです。